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冷蔵庫がイカれた
アイスがぐにゃりとなった
心痛で眠れなくなった
この気温で中身はどうなるのだろう
食品のひとつひとつが思い出され
それをまるきり無駄死にさせたら
と想像したら
あまりの打撃に動揺しうろたえた
今は夜中
打つ手がないという無力感ではない
気づいたのだ
この事態に
私の人生の意義がかかりすぎていると
かいがいしく料理をする
食事の用意をする
それが一等大事なミッション
歌わない描かない語らない
食った♪食った♪食った♪大満足♪
そのあとだ
本をひらいて
なんとなぁく
くたびれて
読めないまま
素敵な装丁をながめ
悦に入った甘さ
こんなもんさという甘さ
そこに虚無のレッテルがぺたり
えっ
これから先ワタシはずっと虚無のひと?
朝になって
冷蔵庫のアイスは固まっていた
なにごともなく
ワタシの虚無は溶けた