ムーディーな時間
猫のピー助は
日に三度この部屋に入りたい
人形のかつらを引っぱったり
小さな細工物をかじったりするのは
もう飽きて
この頃はだまっておとなしく座っている
普段だれにも媚びず
触られるのも嫌がるのに
薄暗く灯りがにじむ部屋の雰囲気が気に入ったのか
みずからこちらに寄りそい
首をなでられ
ごろにャ~と鳴く
ところがある日
うっかりピー助だけ置いて部屋を出て
そのまま忘れた
そうだ 猫 入れっぱなしだ
とやっと気づいた
戸をあけたとたん
すごい勢いで飛び出してくると思いきや
出てこない
なにごともなかったように
ピー助はすました顔で部屋の真ん中に座っている
お待たせピーちゃん
わたしはとびきりの猫なで声をだした